コラム『相続税調査』

大久保昭佳税理士が国税職員時代を振り返って

コラム1 『相続人の頬に流れた涙』

 筆者が国税局資料調査課の実査官時代に担当した相続税調査事案でした。

 臨宅調査(国税職員が自宅に臨場する調査)における現況確認(各部屋にある財産等の確認調査)により、配偶者の寝室のタンスから合計1億円を超える申告外銀行の妻名義定期預金証書が出てきました。現況調査前の聴取では、妻は学校卒業と同時に被相続人と結婚されて就労経験の無い専業主婦でした。また、実家からの受贈財産や相続財産は特に無いとのお答えでした。

 被相続人の収入等により蓄積されたものと推測され、その定期預金証書の形成過程やその運用者等について聴取を行いました。妻は押し黙りを続けていました。暫くして、被相続人と同居の長女が、その母に代わり少しずつ語り始め、漸く、父親が母名義で貯めた預金であることを認めました。そうすると、長女の目から一筋の涙が頬に流れ落ちました。筆者は申告を除外した相続人の後悔の涙と受け止めました。

 ところが、涙ながらに長女は言いました。「税理士さんに申し訳ない・・・。税理士さんには、母名義の預金証書のことを伝えずにいて、本当に申し訳ない。それがわたしの後悔です。」その涙は、税務調査に対する悔しさよりも、納税者としての反省よりも、関与税理士さんとの大切な信頼関係を損なうことへの後悔であったのです。

 結果的に、相続人らには重加算税(35%)が賦課され、その財産には配偶者控除が適用されない(重加算税対象財産には配偶者控除が適用できない)ことから、多額の追徴課税を支払うこととなりました。

 税理士となった今でも、時折この涙を思い出します。自分の関与事案では納税者に追徴課税が賦課されないよう、そして納税者に後悔の涙を流させないよう、家族名義預金には特段の注意を払って、相続税申告書を作成しています。

 

コラム2 『エリート銀行員の逃税(脱税)加担』

 筆者が国税局資料調査課の実査官時代に担当した相続税調査事案でした。

 ある都市銀行の副支店長が、被相続人の生前中に「被相続人の約1.7億円の預金を預金小切手にして出金」し、「換金した現金を自己名義の預金口座に入れ」て、相続開始日にはその現金は相続財産としては無いものとして、その相続人の相続税逃れ(脱税)に加担していました

 預金小切手により換金した約1.7億円の現金を元勤務各支店の元部下数人の女性行員に依頼し、全国数支店のATM(当時の限度額は200万円~500万円)から、繰り返し自己名義の預金口座に入金させていたのです。

 つまり、相続人から銀行員が依頼されて、相続税申告財産から除外した預金・現金を数か月に亘ってマネロン(資金洗浄)していた事案でした。

 この相続税調査事案の相続人にはもちろん重加算税(35%)が賦課されましたが、その副支店長もその銀行の人事部付職員に異動した数か月後に懲戒解雇となりました。

 今でいう長身のイケメンであり有名国立大学出身の若手エリート銀行員による、しかも、その元部下である複数の女性行員(大阪・広島・福岡の各支店在勤)を巻き込んだ相続税申告事案であったことから、国税現役時代の印象深い調査事案の一つとして記憶に刻まれています。 

コラム3 『仮名・借名預金口座名簿』

 筆者が国税局資料調査課の主査時代に担当した相続税調査事案でした。

 課を挙げての無予告一斉調査事案(納税者への調査予約なしに税務調査を開始する事案)で、筆者は総勢約20名の主査・実査官チームの現場チーフを任され、被相続人の主要取引銀行の本支店における「仮名・借名預金口座」の解明調査に臨んでいました。

 実査官から、支店長の机の現況調査においてその引出から大久保主査の名刺コピーが出てきましたとの報告を受けました。支店長にその事情等を聴取したところ、本店よりこの国税局主査は要注意の連絡があったとのことでした。

 昭和の高度経済成長期の中、悪質な納税者により数多くの仮名・借名預金口座が作られ、金融機関も預金口座数や預金量の銀行間競争や支店間競争の中、それが容易に黙認され、支店ごとに「仮名・借名預金口座名簿」が作成されて、実名口座以外の預金口座として別途管理されている時代でした。

 平成に入る頃から金融庁の指導の下で金融機関におけるコンプライアンスの遵守が重んじられ、新たな隠蔽口座は容易に作ることはできなくなりました。

 しかし、既に作られている隠蔽口座は、その解約を預金者に積極的に働きかける銀行は少なく、平成の相続税調査でも、仮名・借名預金口座を利用した申告財産除外事案が数多くありました。

 筆者が国税を退いた後には、銀行の預金口座がネットで売買されているなどの報道も聞こえてきます。金融機関のコンプライアンスが向上する中で、隠蔽口座を作ってまでも脱税を試みる悪質な納税者と国税との戦いは今後も続いていくことになるでしょう。

 

(以下、現在執筆中)

 

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